前向きな人間失格

 

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

 内容的には、明るく、悩みも軽く、前向きな主人公の話。比較的良い大人たちに囲まれた幸せな高校生の青臭い学園生活がここにあります。小説の中では勉強ができなくても、しなやかなに生きる主人公はHEROに見えますが、彼が社会に出たときに会社の中で馴染むのか?チョッと心配です。
 中学生が読むと、勉強が出来なくても良いんだと誤解する可能性や、教師という人間が嫌いになる可能性があり危険と思われます。むしろ、社会を知らない教師が読むべき(誤解を恐れずに言えば、自分は教師という人種は大嫌いです)。特に番外編の「眠れる分度器」を読ませたい。ちなみに「眠れる分度器」は平成10年のセンター試験の現代文の問題にもなったらしいです。
 そう、これは大人向き。体制側が読むべき本であって、奈良で起きた放火殺人、少年の周りの大人たちがこの本に出会っておくべきだったと思います。

 前日に読んだ人間失格にどこか似ていると思って読み進んだ(実際に人間失格の一文も引用されている)。対比してみると面白いと思います。