人はなぜ宗教を必要とするのか

 ムラ社会の「和」を大切にしてきた日本では、「創唱宗教」はムラの「和」を乱すものとして受け入れられてこなかった。しかし、お盆に先祖の魂か帰ってくるだとか、ご先祖様の墓参りといった「自然宗教民族宗教)」を信じており、「無は真理」であるということも理解している。つまり、日本人は無宗教ではないとも言える。「宗教」は科学的でなく非合理だという批判をする人がいるが、宗教は人類の智慧でもあり海外では行動指針とさえなっているものである。宗教とはどういうものか?の十分な理解無しにグローバル化には対応できない。
 仏教では「業縁(人が縛られている、無数の間接・直接の諸条件のこと)」という概念があり、この「業縁」こそ一人一人の固有性を保証するものであり、「業縁」からの解放によって新たな主体性が生まれるとしている。また、人はいつまでも取るに足らない「凡夫」であるため、集団との対話が重要であり、人は皆平等である。これらは、西欧社会が示す「人権」の根拠と同等のものであり、宗教観を持つことによって初めて得られる視点である。

 タイトルから心理学に近い本だと思っていたが、「なぜ宗教を必要とするのか」というよりは「なぜ宗教が必要なのか」に近い。
 宗教初心者は、井沢元彦氏の「世界の宗教と戦争講座」を読んでからの方が分かりやすい。

人はなぜ宗教を必要とするのか (ちくま新書)

人はなぜ宗教を必要とするのか (ちくま新書)