コミュニケーション不足が生んだ悲劇

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

 まず、プライバシーの侵害や情報漏洩の部分で言えば色々と問題だと思います。この部分は今後の展開に期待します。
 それよりも、捜査資料に基づいた真実を書いたといっていること自体がどうでしょうか?反転を読む限り捜査資料自体に100%真実であるとも思えないですし、捜査資料をまとめている作業自体に、表現者の主観や意図が入り込むでしょう。週刊誌で騒がれた内容とは大きく異なっているようですが、ここに書かれていること「だけ」が本当のことでは無いと思われます。
 事件が起きた原因が、「父親の育て方が」とか、「両親が離婚が」とか、「精神の病気が」等など挙げられるようですが、事件の真相をこの本で知ろうというのであれば、週刊誌の報道とそれ程変わらないレベルであると思います(中立性が高いとは思えません)。

 志賀直哉の「流行感冒」の中にこんな一節がありました。
「両方とも今とその時と人間は別に変わりはしないが、何しろ関係が充分でないと、
いい人同士でもお互いを悪く思うし、それが充分だといい加減悪い人間でも憎めなくなる」
 親子、夫婦、親戚。上手くバランスの取れた関係性を結べたのであれば、今回のような最悪の事態は免れたかも知れないです。